「完乗」とは「完全に乗車する」という意味で、「JR全線完乗」と言った場合、約20,000km弱ある全国JRの路線全てに一度は乗ることを目指すことになります。
鉄道旅行を始めてからというもの、かなり全国各地の路線に乗っているほうだとは思っていましたが、実際に何キロ乗ってそれが全体の何%にあたるのか、といったことにはあまり関心がなく、ことさら計算をしたこともありませんでした。
完乗といえば、当時の国鉄全線に完乗する様子を綴った紀行作家・宮脇俊三氏の代表作『時刻表2万キロ』が有名です。昔からある鉄道趣味の一形態といえますが、それを実行しようと考える人というのは、ごく一部の人なのだろうと思っていたのです。
しかし私にとってはどこか遠い世界の話と思えた「JR全線完乗」を意識するきっかけをくれたのは、「乗りつぶしオンライン」というサイト。今まで自分が乗った区間を入力していくだけで、乗車キロ数や乗車率などを自動的に集計してくれるというスグレモノで、こんな素晴らしいプログラムを、Web上で無償公開してくれているのです。
この「乗りつぶしオンライン」に今まで乗った区間を入力していくと、JR全線の約70%(2005年8月当時)に乗っていたことがわかりました。しかもこのサイトがすごいのは、「乗りつぶしマップ」という地図を自動生成してくれるところ。乗車済区間と未乗区間が路線図に色分け表示され、どこに乗ったのか一目瞭然。今までも、雑誌の付録についてくる「乗りつぶしマップ」をペンで塗ったりしていましたが、結構面倒で……。
あと残り30%ならもう少しじゃないか、と思うかもしれません。しかし、例えば北海道にあるたった2kmの未乗区間に乗車しに行くだけでも、東京から片道1,000km以上の距離を往復しなければならないのです。こういう未乗区間が全国に散らばっているのですから、金銭的にも時間的にもそう容易ではないことがおわかりいただけるでしょう。
鉄道事業法に基づく許可または軌道法に基づく特許を受けて旅客営業する日本の鉄道および軌道が「完乗対象の鉄道」です。ただし、索道(ロープウェイ、リフト等)は対象外としました。なお、鉄道と軌道は特に区別せずに扱います。
(1)普通鉄道:鉄道と聞いたときにイメージする普通の鉄道。
(2)懸垂式鉄道:ぶら下がり型のモノレール。
(3)跨座式鉄道:跨がり型のモノレール。
(4)案内軌条式鉄道:案内輪を案内軌条(ガイドレール)に沿わせながら専用の通路を走行するもの。
(5)無軌条電車:道路上の架線(トロリー)から集電した電気で走行する、いわゆるトロリーバス。
(6)鋼索鉄道:ケーブルカー。
(7)浮上式鉄道:リニアモーターカーなど。現在旅客営業しているのは「リニモ」のみ。
さて「JRの全線に完全に乗車する」といっても、何をもって完全とするのか、というとなかなか難しい問題です。
この問題を解決するには、まず「JR全線とは何キロあるのか」ということをはっきりさせる必要があります。そこでJR線のキロ数がわかる公式資料をあたることになりますが、これがまたひと苦労。
JRの営業区間とされていながらも列車がほとんど運転されない区間があったり、JRの旅客列車がJR貨物の所有する線路を走っていたり、何とも複雑な状態なのです。
いろいろと検討してみたものの、「この線は乗るけどこの短絡線は乗らない」というように、その取捨選択がどうしても恣意的になってしまいます。そこでこの際、「乗りつぶしオンライン」が集計対象としている路線に倣うことにしました。ですから「乗りつぶしオンライン」に計上したキロ数の合計が100%になった時点が完乗というわけです。
「乗りつぶしオンライン」が集計対象としているのは、下記の路線です。
※「乗りつぶしオンラインのご案内」より引用
- JR各社の営業路線のうち、運賃計算に用いられる営業キロを持つものを計上する。定期列車の運転がない区間や、短絡線等は対象としない。
- 新幹線と在来線とは、別々の路線として計上する。
- 原則として複数路線の重複区間はないものとするが、JR発足以降に新駅が設置されたことによる重複区間がある。
なお、この条件に含まれないものに、旅客会社の第1種区間の一部、JR貨物の第2種区間などがありますが、これらの区間にもできるだけ乗車するように努め、乗車した際には参考記録として紹介することにします(キロ数の計上はしません)。
こちらはJRを除いた鉄道事業者すべての旅客営業線が対象となります。こちらも、「乗りつぶしオンライン私鉄版」に計上したキロ数の合計が100%になった時点を完乗とすることにしました。
「乗りつぶしオンライン私鉄版」が集計対象としているのは、下記の路線です。
※「乗りつぶしオンライン私鉄版のご案内」より引用
- 鉄道事業法による免許または軌道法による特許を受けた事業者が旅客営業を営む区間を対象にする。ただし、JR各社の路線については対象にしない。
- 線名、営業キロは原則として「鉄道要覧」に記載されたものによる。ただし、明らかに誤りとみられるものについては他の資料、書籍等を参考にした。
- 貨物営業のみを行っている区間および休止区間等は対象にしない。
- 前項のうち、臨時に旅客営業を行うことがある区間は対象にしない。ただし、冬季運休する区間あるいは定休日のある区間等、継続して営業している区間については毎日営業でなくとも対象にする。
- 第三種鉄道事業者として営業する区間はその事業者について対象とせず、第一種または第二種鉄道事業者の営業する区間として計上する。同一区間に対して第一種と第二種、または複数の第二種鉄道事業者が営業している場合は、それぞれについて重複して計上する。
私としては、それほど厳しいルールを課すつもりもないのですが、いちおう下記のように決めています。
- 乗車列車の種別は問わない。
- 乗車した昼夜の別は問わない。ただし、乗車列車が全区間を夜間に通過した場合は、昼間に再乗車するのが望ましい(※1)(例えば夜行列車で深夜に通過しただけの区間など。ただし地下区間を除く)。
- 乗車時の一時的な居眠りは問題としない。ただし、全区間を眠って過ごした場合は前項と同様に再乗車するのが望ましい。
- 災害等により長期運休となっている区間(※2)は、代行輸送がある場合には代行輸送の利用をもって乗車したものとみなし、運転再開後、列車での乗車をしなければならない。
※1)再乗車が望ましい区間(2006/02/01現在)
※2)災害等による長期運休区間(2007/09/08現在)
■「乗りつぶしオンライン」に含まれない、旅客会社の第一種区間(おもなもの)
■旅客会社の第二種区間
■旅客会社の第三種区間
■貨物会社の第二種区間で、旅客列車が走る可能性のある区間
■キロ数の設定がなく、列車の運転があるおもな区間
※鉄道事業の種別(鉄道事業法より抜粋)
第二条 この法律において「鉄道事業」とは、第一種鉄道事業、第二種鉄道事業及び第三種鉄道事業をいう。
2 この法律において「第一種鉄道事業」とは、他人の需要に応じ、鉄道(軌道法 (大正十年法律第七十六号)による軌道及び同法が準用される軌道に準ずべきものを除く。以下同じ。)による旅客又は貨物の運送を行う事業であつて、第二種鉄道事業以外のものをいう。
3 この法律において「第二種鉄道事業」とは、他人の需要に応じ、自らが敷設する鉄道線路(他人が敷設した鉄道線路であつて譲渡を受けたものを含む。)以外の鉄道線路を使用して鉄道による旅客又は貨物の運送を行う事業をいう。
4 この法律において「第三種鉄道事業」とは、鉄道線路を第一種鉄道事業を経営する者に譲渡する目的をもつて敷設する事業及び鉄道線路を敷設して当該鉄道線路を第二種鉄道事業を経営する者に専ら使用させる事業をいう。
乗りつぶしオンライン
駒鉄太郎の鉄道データベース
駅名変遷事典(JTB・1993年「旅」4月号付録)
平成十三年度 鉄道要覧(国土交通省鉄道局)
停車場変遷大事典 国鉄・JR編 (JTB)