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めくるたび
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ミニ旅行記:JR完乗の旅・出発前の顛末
片道乗車券の壁

6月、豪雨により不通になっていた三江線・浜原〜江津間と越美北線・一乗谷〜美山間が相次いで復旧した。代行バスの乗車で「暫定」完乗となっていたこれら2区間に再乗し、もってJR全線の完乗を達成しようというのが今回の旅の目的である。三江線と越美北線という離れた場所にある2線を同時に回るのは少々強引だが、6月中に完乗するといろいろなところで宣言してしまったので後へは引けないし、テツではない友人から頂戴した「暫定男」という不名誉な称号を一刻も早く返上しなければならない。

まだ青春18きっぷのシーズンではないので、乗車券をどうしようか検討した結果、今回は片道乗車券にすることにした。せっかくだから、ちょっと遠回りして「憧れの」出補による発券となるような経路にしようと企んだのだが、これが思いのほか面倒なことになってしまったのだった。

なお、乗車券発券までの以下の顛末はいささか退屈とも思われるので、興味のない方は読み飛ばしていただいて一向に構わない。

JRの「旅客営業規則」と「旅客営業取扱基準規程」というのが一緒になった分厚い本を久しぶりにひっくり返し、JRの営業制度に詳しい方のサイトも参考にしながら経路を検討し、最初に考えたのがこの経路である。

東京→長津田
経由:東海道、山陽、芸備、三江、山陰、伯備、姫新 [佐用] 智頭急行 [智頭] 因美、山陰、[豊岡] 北近畿タンゴ鉄道 [西舞鶴] 舞鶴、小浜、北陸、信越、上越、高崎、東北、山手2、中央東、横浜

経路が16経路以上になるとマルスでの発券はできずに、手書きの「出札補充券」(通称、出補=しゅっぽ、と読むそうだ)による発券となる。

ともかくこの経路と運賃計算キロを書いた紙を携えて、6月20日22時50分、池袋駅中央みどりの窓口へと勇躍乗り込んだ。もっとも、ただでさえ終了間際の時間に、こんなやっかいな乗車券を依頼されるほうはたまったものではないだろうが。もう誰も並んでいないので、そのまま空いている窓口へ。女性の係員が応対する。

経路を記した紙を差し出しながら、「乗車券を、この経路で」と申し出ると、少し動きが止まった後、やおらマルスを叩き始める。しばらく叩いているので「機械では出せないですよね?」と言うと、「ええ、そうなると思います」と言いながらまだ叩いている。どうやら、出せないことをいちおう確認することになっているらしい。

当然途中で入力できなくなり、「やはり機械では出せないので手書きになりますがよろしいですか?」と言う。もちろんこちらもそのつもりなので、いつ頃できるか尋ねると、「ちょっと確認してきます」と言って奥の事務所へ消えた。衝立ての向こうで鳩首会議、とまではいかない切符だからすぐ戻ってきた。「おまたせしました、明日のお昼頃になりますが、よろしいでしょうか?」思ったよりも早くできるようだ。名前と電話番号を知らせて、この日はひとまず帰途につく。

発券不可

実は上記の経路には一つ不安な点があった。それは、JR以外の会社線を2社通過していることである。ネット上で調べると、どうも「通過連絡運輸は1乗車券につき1社に限る」という内規のようなものがあるらしい。そんな大事なことは旅客にもわかるようにしておいてほしいものだが、仕方がない。

翌日、早速電話がかかってきた。しかしその内容は、制度を担当している部署に問合せたところ、智頭急行と北近畿タンゴ鉄道の2社の他社線が入っているので発券できない、2枚に分けていただくしかない、というものだった。「智頭で分けてはどうでしょうか?」と勝手に話を進めようとするが、2枚に分けるくらいなら最初からこんな経路で頼まない。

「そういう決まりは時刻表に書いてあるのですか?」
「いや、書いてないです。連絡の取り決めというのがありまして云々」
「JR東日本さん以外なら発券可能なのでしょうか?」
「おそらくですけど、だめだと思います。連絡の取り決めというのがありまして云々」

要するにそういう決まりだから、というだけで埒があかない。とりあえず、ルートを再検討しますと言って、申込みはいったんキャンセルした。

またまた発券不可

JR東日本以外のJR各社や旅行代理店なら発券できる、という情報も得ていたので、同日、JTBのトラベランド池袋西口店へ向かう。

JRの乗車券をお願いしたいのですがと、例の紙を差し出す。どこかへ電話をかけながら端末を操作して30分くらい待たされる。しかし結局JRと発売条件は変わらないという答えだった。JRで発券できないものはうちでも発券できない、他の旅行会社もみんな同じだという。

この担当者は、豊岡〜西舞鶴を北近畿タンゴ鉄道経由でなくJR経由の片道乗車券で作り、北近畿タンゴ鉄道の区間を別途買ってはどうか、と言う。先ほどの電話相手の入れ知恵かもしれないが、遠距離逓減制を考慮した、なかなか的を射たアドバイスである。しかしそれも丁重にお断りして店を辞した。

結局ムダ足2回になってしまったが、このことで少なくともJR東日本(びゅうプラザ含む)とJTB(とおそらく他の旅行代理店も)においては「通過連絡運輸は1乗車券につき1社に限る」という内規がまだ生きているということがはっきりしたから、これはこれでためになったといえる。

ついに出補完成、しかし……

ともかくこうなっては仕方がないので、経路から智頭急行をはずして次のように変更することにした。

東京→長津田
経由:東海道、山陽、芸備、三江、山陰、伯備、姫新、因美、山陰、[豊岡] 北近畿タンゴ鉄道 [西舞鶴] 舞鶴、小浜、北陸、信越、上越、高崎、東北、山手2、中央東、横浜

これを携えて、今度は池袋駅南口みどりの窓口へ行き(場所を変えたのは特に深い意味はない)、15分ほど並んで同じ依頼をした。

6月22日朝、早くも切符が出来た旨連絡があったので引き取りに行く。応対したのは若い女性の係員で、どうやら新人らしい。今は研修の時期なのか、後ろにはもう一人の若い男性研修生がメモ帳を片手に座っている。頼んであった乗車券を引き取りにきたと告げると、あたふたしながら二人そろって奥の部屋へ消える。しばらくして薄緑色の出補を手に戻ってきた。

こんな乗車券はやはり珍しいのであろう、時々手を止め何やら考えながら、用紙に何か書き込んだり印を押したりしている。そしてそれをもう一人の研修生が後ろから興味津々、といった具合にのぞきこんでいる。貴重な研修材料としてお役に立てていただけたなら幸いであるが。

そして渡されたのがこの乗車券である。

出補

ところが、ざっと眺めただけでも疑問点が2ヶ所ある。

  1. 発駅が「東京(都区内)」で、単駅指定※1になっていない。
  2. 経由の「高崎、埼京、中央東」は実乗予定の経路と異なる。

どうやらおかしいことはわかるのだが、その論拠に自信がないので、こういった乗車券でのご旅行経験が豊富なよねざわいずみさんにご意見を伺ってみた。するとやはり下記の点に問題がありそうだということがわかった。

  1. 東京(都区内)発では、2度目に都区内エリアに差しかかった時点で環状線一周となり、それ以上進めなくなってしまう。よって正当な片道乗車券になっていない。(※2)
  2. 東京(単駅)発の切符であれば可能な有楽町〜蒲田間での途中下車の権利が制限されてしまう(途中下車するしないにかかわらず)。
  3. 規則第69条第3項に照らして、経路表記がおかしい。
  4. 規程109条※3には、規則第70条の区間を複数回通過する場合「実際の経路で計算することができる」とあり、この解釈によっては乗車券の効力が著しく変化してしまう。

さらに、SWA の Web ページで作者のSWAさんが公開しておられるJR運賃計算システム MARS for MS-DOSで営業キロと運賃計算キロを計算し、それを書き添えておくとよいというご助言もいただいた。このソフトの存在は以前から知っていたものの、自宅はMS-DOSを使える環境になく試す機会がなかった。そこでインターネットカフェに行き、早速ダウンロードして使ってみるとこれが素晴らしいものだった。

あとは野となれ山となれ?

そうこうしている間に、旅行開始まであまり猶予がなくなってしまった。とにかくまた窓口へ出向く。決して苦情などではなく、一旅客として気持ちよく旅行をするために、正当な乗車券なのかをはっきりさせたいだけなのだが、いざとなると「面倒な客」になりたくない心理が働き闘志が薄れてしまうのは我ながら情けない。すっかり弱腰になりながら問題点を指摘してみた結果、

  1. 東京(都区内)発は誤りで、東京(単駅)発に修正する。
  2. 券面記載の経路は実際の乗車に問題なし。

ということになった。

1については、正当な片道乗車券ではないことがめでたく認められたわけだが、2については、「実際の乗車には問題ないから」ということで結局丸め込まれた感がないこともない。その根拠としては、時刻表のピンクページを開き、規則第69条第3項同第70条に該当する部分を指し示していた。

かくなる上は窓口係員の説明を信じ、この乗車券で問題なく乗車できるのかどうか、実際に旅行してみる以外にないようだ。

なお、1の修正については乗車券の再発行ではなく、「(都区内)」の記載部分へまつ線2条を引き駅名小印を押すことにより処理された(下の画像参照)。

訂正方
今回の顛末を総括すると

乗車券とはすなわち旅客運送契約の証票なのだから、事業者側は約款に基づいて正当なものを作らなければならないし、旅客にはそれを請求する権利がある。ところが実際の運用の現場においては、その解釈に関する慣行や内規のようなものが多数存在し、これを旅客が正確に把握することは不可能に近い。

ただ、それらが旅客の不利益にならないものであるとするならば、窓口係員の「実際の乗車には問題ない」という言葉に従うことはまったくもって合理的だ。だいたい、一般の旅客はこれらを気に留めることもなく乗車し、それが問題になることもないのだ、と言ってしまっては身もふたもないのだが。

実際、今回の旅行でも何ら問題はなかった。というより、問題にされる場面すらなかったのだが、それはまたいつか触れることにしよう。

※1:
旅客取扱基準規程第115条(下記注参照)が適用される乗車券において、特定都区市内制度によらず、実際の発(着)駅を指定すること。

※2:
規程第115条(特定都区市内等にある駅に関連する普通旅客運賃計算方の特例)
特定都区市内駅にある駅を発駅とする場合で、普通旅客運賃の計算経路が、その特定都区市内の外を経て、再び発駅と同じ特定都区市内通過となるときの鉄道の普通旅客運賃は、実際乗車船経路が環状線一周となるとき又は折返しとなるときを除いて、その着駅が、発駅に関連する特定都区市内駅の中心駅から、営業キロが200kmを超えるときであつても、規則第86条の規定を適用しないで発駅から、実際の営業キロ又は運賃計算キロによつて旅客運賃を計算することができる。(第2項以下略)

※3:
規程第109条(特定区間を再び経由する場合の普通旅客運賃の計算方)
規則第69条及び同第70条に規定する区間の一方の経路を通過した後、再び同区間内の他の経路を乗車する場合の鉄道の普通旅客運賃は、旅客の実際に乗車する経路の営業キロ又は運賃計算キロによつて計算することができる。